【江戸町屋の家】 ご紹介
今回は、この春無事にお引き渡しをさせていただいた「江戸町屋の家」のご紹介します。
【住宅スペック】
Q値 1.39 W/m2K
C値 0.16 cm2/m2(中間測定時)
0.32 cm2/m2(竣工時)
ηAC 1.2
■出会い
このお客さまとの出会いはある方からのご紹介でした。
その方が言うには「木の家で和室に広縁があるような家を造りたいが、なかなか希望すべてを叶えてくれる業者がいないと言っている人がいるのだけれど、少し相談に乗ってあげてくれないか。」とのことでした。
こういった要望は私達三幸住宅の得意としているところなので、二つ返事でその方にお話を伺うことになりました。
■施工業者確定までの経緯
初めてお目に掛かったのが2018年秋のことだったと思います。
事前にある程度のご要望を伺っていたので、まずはイメージの共有(私にとっても、お客さまの頭の中のイメージを把握することが大切なので)をするために、三幸住宅が施工した「木の家」や「和風住宅」のOBさまの家を一緒に見学することになりました。
その後、あらためてよくお話しを伺ってみると……
・このお客さまは川越が好きで、十数年前にここ川越に引っ越してきたこと
・川越が好きということもあって、川越の街並みに溶け込むような家にしたいこと
・その中でも町屋風の家がよいこと
・いま現在の温暖化による異常気象に対応出来る家で、自分自身もこれからは少ないエネルギーで暮らしていきたいこと
・若い頃は登山もしていたそうで、昔自分の目で見たヨーロッパの氷河と、おなじ場所の現在の氷河が大きく変わってしまっていること
・古民家にも興味があり、ご自身でも茅葺き屋根の葺き替えなども手伝っていること
・竹細工が趣味なこと
・自転車(ロードバイク)が趣味なこと
などなど、色々な家への想いと、これからどの様に生活していきたいか?という話が数多く出てきて、私(造り手)の率直な感想は「これは難易度が高めだな……」というものでした。
それからは、私が主催している家づくり教室「家楽くらぶ」や、施工現場の構造見学会、完成見学会も、たびたび足を運んでいただくようになり、仮プランなどを提案しながら、三幸住宅の家造りがどういうものなのか、という話をさせていただきました。
初めてお目に掛かってから、1年くらい経った頃でしょうか……。
「いろいろ検討した結果、三幸さんにお願いしようと思います。」 との電話をいただき、こうしてまた1組のお客さまとタッグを組んで良いものを造るプロジェクトが動き始めました。
■設計コンセプト
だんな様と息子さんの二人住まいという条件で基本性能を高性能化し、家の中で竹細工のアトリエも含める。
そこに和室と広縁を設けてワンルーム設計にしつつ、温湿度環境も整える。
これからの生活をできるだけイメージし、本当に欲しいもの(必要なもの)、用が足りれば良いものをハッキリさせ、コストダウンに繋げる。
外観は江戸町屋を再現したデザインにしつつ、温熱環境にも配慮した窓配置、動線や機能面も十分に考慮しデザインに溶け込ませる。
その中で耐震等級3と制震性能も装備する……。
ということを最低条件として実施設計を開始しました。
それでは最初の入口、木格子戸を開けて中に入ってみましょう……
格子戸を入ると、半外の土間スペースへの玄関へのアプローチ。
ここは竹細工の作業スペース兼用となり、左側突き当たりには手造りした作品を入れる間接照明付きショーケースがあります。
逆側(右側突き当たり)には、多用途に使える収納があります。
格子戸の横(左側の壁)には木製(現場施工)のポストと宅配BOXをこの家全体のイメージを損なわないように配置し、
玄関の外照明も手造りしました。(イメージは隠れ家的高級割烹の入口)
玄関を入ると、約7畳の土間スペース……
ここが竹細工の作業スペース(アトリエ)となります。
土間とリビングを一体化し、住宅でそこまで広さがとれないスペースをできるだけ広く見せるようにし、室内の床高さと土間の仕上がり高さの差をあえて370mm程度に設定し、和室の畳が竹細工作業中の腰掛けになるようにしています。
室内側、この家一番のこだわり……リビングです。
コンセプトは囲炉裏のある和室リビング。
夜になると外からも格子越しにチラチラ見ることが出来て、「この家は何なんだろう?」と思わせる雰囲気をもたせるようにしました。
火棚、自在鉤、テーブルも含めて、現場でお客さまとお互い納得がいくまで話をしました。
本物の囲炉裏とはいきませんが、できるだけ本物感を出すために試行錯誤して造りました。
特に自在鉤に照明を融合させたデザインは本当に苦労しました。
※ちなみに、この自在鉤はお客さま作……本当に上下スライドできる自在鉤となっています。(素材:竹、ケヤキ、シュロ縄)
アングルを変えて……
広縁も含めて、1階の造作材は基本的にすべて桧です。
キッチンとトイレ……
特にキッチンに関しては、この家の基本的な考え方の象徴で、「煮炊きができればよい」ということでできるだけシンプルにしました。
三幸住宅の空調(エアコン)の基本的なセット位置は脱衣をメインに考えます。
このようにできないプランニングもありますが、夏冬共に住環境を有利にして、デザイン的にもエアコンの姿をできるだけ消すことができます。
浴室(脱衣)を使っていて、入口の建具が閉まった状態でもエアコンが機能するように、欄間などの開口スペース(オープンな部分)をより多く設定します。
階段を上がって2階に来ました。
木格子から朝日が入り、格子の影が浮かびます……。これもまた、雰囲気のあるものです。
ということで、今回の「江戸町屋の家」は以上になりますが、最後に照明に火が灯ったときの雰囲気を紹介して終わりたいと思います。
ありがとうございました。
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